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「労働弁護士『宮里邦雄』55年の軌跡」

 

ミスター労働弁護団・宮里邦雄先生の書籍が出版された。

第1部はインタビュー形式により55年間に宮里先生が関わられた事件等が時系列に沿って紹介されている。聞き手が、労働組合出身の高井さん、ということもあり、非常に読みやすく、簡潔ながらも、当時の様子が目に浮かぶように読み取れる。

第2部は、宮里先生が労働事件に関して折々に記述されたエッセイであり、これも折々の様子が目に浮かぶ記述である。最後の第3部は、「折々の記」と題した思い出話や近況だが、「宮里少年」や「宮里青年」の姿が感じられて、宮里先生がさらに身近に感じられるのがうれしい。

お薦めの一冊である。

論創社・2000円

(弁護士 髙木太郎)

労働弁護士「宮里邦雄」55年の軌跡

エスカレーターでは立ち止まろう

「埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が成立し,今年の10月1日に施行されます。
この条例は全国初だそうです。

エスカレーターの事故は少なくなく、事故の約70%が転倒によるもので、歩行に関連して転倒する事故が多いそうです。
かなり昔(昭和。私が子どもの頃)、エスカレーターは止まって乗っていたような気がします。
ところが、そのうち「外国では片側を歩くために空けている」というようなことを見聞きするようになり、いつのまにかそれが当たり前になったような記憶があります。
(ちょうどトイレもバラバラに並ばず、現在のように1列に並ぶようになる。そんな頃だったかもしれません。)

しばらく前からエスカレーターを歩行しないようにというアナウンスが多く聞かれるようになり、最近は朝の混雑時の駅などでも立ち止まって乗る人が多くなったように感じます。
私も実は以前はよく歩行してしまっていました。今は足が痛いからという理由だけでなく、止まって乗っています。
片側を歩行で利用するよりも、2列で並んで止まって乗った方が時間が短縮されるという話を聞いたこともあります。
また、安全面のほか、介助の必要な人や、右しかつかまれない人や左しかつかまれない人もいます。

条例は「県、県民及び関係事業者の責務を定めるとともに、エスカレーターの利用者及び管理者の義務を定める」とあり罰則規程もありませんが、何より誰もが利用しやすく、安全に利用できるということを意識するきっかけになるのはいいことなのかなと思いました。
(事務局M)

「選択的夫婦別姓を考える」

5月29日(土)川口市にて『選択的夫婦別姓を考える』の講師をしてきました。コロナ下での開催でしたが、実際に足を運んで下さった方が25名、終了後もバラエティに富んだ質問をたくさんしていただき、皆さんの関心の高さがうかがえました。

以下、少しだけその内容抜粋してお伝えします。

 

1 法律で定められた夫婦別姓

日本では、民法750条で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と規定されています。別姓も選択可能な国際結婚を除き、法律的に「結婚」するためには、夫婦のどちらかが姓(名字)を変えなければなりません。

また、戸籍上も、74条1号で婚姻届を提出する際には、「夫婦が称する氏」を記載して、届け出なければならない。とされています。すなわち、夫婦が称する氏を、夫の氏か、妻の氏いずれかに選択しないと婚姻届を受理してもらえません。

日本は先進国で唯一「夫婦の同姓」を強要する国だと言われています。

 

2 妻の姓を選ぶカップルは、わずか4%

民法の条文は「夫又は妻の氏を称する」となっていますが、平成28年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/konin16/dl/01.pdf)によると、平成27年婚姻件数63万5156件のうち、妻の姓を選んだのは2万5400組で、全体の4.0%。

女性にとっては、「結婚=姓を変える」ことが避けて通れない問題となっています。

 

3 我が国における氏の制度の変遷

 もっとも、実は、夫婦同姓の歴史はそれほど古くはありません。身分制度がありましたので、一般の人が姓を名乗れるようになったのは、明治時代に入ってからのこと、徴税や兵籍管理のため、戸籍制度を整備するために導入されたと言われています。

また当初は、妻は結婚後も実家の姓を名乗るとされましたが、明治31年(1898年)民法で「家」制度を導入し、夫婦ともに「家」の氏として同氏を称することとなりました。すなわち、日本において夫婦同姓の歴史は、わずか123年ほどということになります。

 

4 選択的夫婦別姓導入に対する意見

⑴ 賛成意見・反対意見

選択的夫婦別姓については、以下のような意見が聞かれます。

① 賛成意見

・自分の名字に愛着がある

・男女平等につながる

・名字が変わることでの手続の大変さがなくなる。

・選択肢が広がるのはいいこと

・途中で名字が変わることで、キャリアの積み上げが絶たれる。

② 反対意見

・子供にとっては同姓がいい。

・旧姓を通称として使用すれば問題ない

・結婚の意義が薄くなり、離婚が増える、夫婦の一体感を損なう。

・結婚後は家族として同姓にすべき

・誰と誰が家族なのかわかりにくい。

⑵ 世論調査の結果

http://www.moj.go.jp/content/001271412.pdf

平成29年に実施した「家族の法制に関する世論調査」の結果では、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」と答えた方の割合が29.3%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」と答えた方の割合が42.5%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」と答えた方の割合が24.4%となっていますが、この間、女性の社会進出がさらに進み、男女が対等なパートナーとして家事や育児で協力し合うライフスタイルも増えつつある中で、選択的夫婦別姓を求める声は強まっています。

 

5 夫婦別姓訴訟・令和3年4月21日東京地裁判決

そして、つい最近、大変話題になった判決のお話しです。

⑴ 事案の内容

本件は、アメリカ合衆国のニューヨーク州において別姓のまま婚姻を挙行したとする原告らが、千代田区長に対し、「婚姻後の夫婦の氏」につき「夫の氏」と「妻の氏」のいずれにもレ点を伏した婚姻の届書を提出して婚姻の届出をしたところ、民法750条及び戸籍法74条1号に違反していることを理由として不受理とする処分を受けたことから、被告に対し、⑴主位的に、戸籍法13条等に基づき、戸籍への記載によって原告らが互いに相原告と婚姻関係にあるとの公証を受けることができる地位にあることの確認を求め、⑵予備的に、①憲法24条等に基づき、被告が作成する証明書(戸籍への記載以外の方法によるものと解される。)の交付によって原告らが互いに相原告と婚姻関係にあるとの公証を受けることができる地位にあることの確認を求めるとともに、②外国の方式に従って「夫婦が称する氏」を定めないまま婚姻した日本人夫婦について、婚姻関係を公証する規定を戸籍法に設けていない立法不作為は憲法24条に違反するなどと主張して、国家賠償法1条1項の規定に基づき、慰謝料各10万円の支払を求めていた事案です。

⑵ 判決の概要

令和3年4月21日、東京地裁は婚姻関係を戸籍へ記載できることの確認といった請求を却下・棄却した一方で、「民法750条の定める婚姻の効力が発生する前であっても、…婚姻自体は、有効に成立している」、「(婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。と規定する)通則法24条2項は、外国に在る日本人が『夫婦が称する氏』を定めることなく婚姻することを許容しているものと解さざるを得ないのであり、そのような場合であっても、その婚姻は我が国において有効に成立しているというほかない」と判示し、アメリカで成立した2人の婚姻関係については国内でも有効であることを認めました。

国は、「『夫婦が称する氏』を定めていないため、我が国において婚姻が成立していない」と主張していましたが、裁判所は、「婚姻挙行地である外国の方式に従って、『夫婦が称する氏』を定めることなく婚姻が挙行されることは、当然に想定されている」「婚姻自体は成立しているものと解するほかない」と述べ、国の主張を明確に否定しました。

⑶ 本判決を受けた今後の展開

原告及び弁護団において、本判決は控訴しないことが決定され、本判決は令和3年5月7日に確定しました。

外国で結婚する場合、その国の方式に従って結婚していれば、婚姻年齢等の日本民法が定める実質的婚姻要件を満たす限り、別姓のままでの結婚も有効に成立していることは、戸籍実務や相続実務などでは知られていましたが、本判決によって、この点が改めて明らかになりました。

なお、本判決は、まだ決定して間もないので、今後、本判決の評釈や戸籍への記載についての議論状況を注視する必要があります。

この点、本訴訟の弁護団は以下のようにコメントしています。

「本判決は、訴えそのものは斥けましたが、別姓のまま婚姻関係にあることについて、戸籍への記載ができないと判断したわけではありません。

本判決は、戸籍記載の可否については判断を示さず、手続きの異なる家庭裁判所への『申立てを通じて、婚姻関係が戸籍に記載され、戸籍の謄本等の交付を請求することもできるようになり得る』として、その可能性があることを指摘しています。」

「本判決は戸籍への記載を否定したわけではなく、むしろ、戸籍法に基づく家裁への申立の方法によって婚姻関係が戸籍に記載され得ると判断しましたので、今後は、家裁への申立をする方向で検討することとしました。

家裁においては、別姓のまま外国においてその国の方式でした結婚について日本国内でも有効に成立している(「法律婚」である)との本判決の判断を前提に、戸籍への記載の方法等について審理・判断されることが期待されます。」としています。

 

この判決の影響をどう見るかについては、今後に持ち越されますが、いずれにせよ選択的夫婦別姓制度の早期実現の必要性がまた一層明らかになったということはいえると思います。

(弁護士 南木ゆう)

「JUSTICE」

中国人戦争被害賠償請求事件弁護団が、その裁判の始まりから内容、証言、裁判にまつわる経緯などを記載した書籍を発行した。

弁護団の弁護士がどういう経過で、その事件に取り組むことになったのか、中国の当事者の人から聞き取った内容、被害者やそれに関わった方の思い、戦後50年も以上も過ぎてから取り組まざるを得なかった理由など、いろいろ知りたい情報が詰まっている。

トランプのような科学軽視は日本でも政権やそれに近い人の間では顕著だ。自然科学だけではなく、社会科学にも及んでおり、歴史学では「過去の事実に目をつぶる」こととして現れている。私たち自身が、正しく「過去の事実」を知ることの大切さを、改めて感じさせてくれる書籍である(高文研、2750円、注文先FAX03-3853-1209)。

(弁護士 髙木太郎)

「鬼滅の刃」大流行に思う

世間では、 「鬼滅の刃」なるテレビアニメが大流行で、この土日(10月17日、18日)には映画館に親子連れが並び、映画館から出てくる母親は涙を浮かべている、という。
「鬼滅の刃」は大正時代を想定したもので、「鬼」にされた妹を人間に戻すために、竈門炭治郎という少年が鬼殺隊という集団に入って、鬼を退治していく、という物語である。

なんでこの物語が受けるのか。
この物語では、鬼はもともと人間で、鬼のボスの血を受けると鬼になるのだが、散々悪行を働いても、退治されて消滅するときに、人間だった頃の記憶を取り戻し、なぜ、鬼になって悪行を働くようになったかが語られる。
そして悔い改めて消えていくのである。

昔からある勧善懲悪ものでは、悪は悪として成敗されて終わる。しかし、それでは、相手方である「鬼」を理解できないままであり、怖さと、異質なる者の排除の思いだけが残る。
それに対して、「鬼滅の刃」では、相手は理解できる存在となって終わる。見る側も相手を許す(行為は許せなくても)気持ちで終わることが出来る。
人々はこれを求めているのではなかろうか。

最近の世の中は自分ファーストが蔓延っていて、ギスギスしているように見えるが、人はそうではないものを求めているのだ、と思いたい。
(弁護士 髙木太郎)

巣ごもり生活

普段日曜日位しか長い時間、家族と一緒に過ごすしかなかった私にとっては悪しき時間でもあり良き時間にもなっています

子供にとっては勉強の遅れ、運動不足が心配です
インターネットの学習法も学校から通知をいただきましたが、あまりやろうとせず、動画や通信を利用した友達とのゲーム時間が増えています
室内で騒いで、私が「うるさーい」と声を荒げ、私の顔色をうかがう子供、お互いがストレスに

でも普段友達とどういった遊びが流行っているのか
子供にとって一番の興味が何か
四字熟語や世界の国旗カルタで親もムキになってカードを取る
家族全員で縛りしりとりゲームをする
一緒に夕飯の用意をするなど、子供から「~~しようよ」と言ってくれることが増えました

普段の家事では聞かなかった「ありがとう」という言葉
この生活で毎日の消毒作業を続けている時、家族から「いつもいつもありがとう」「手伝うよ」と言われました

今は巣ごもり生活をいかに楽しむかが家族会話の一部です

(事務局 竹前)

冷静さを失わない

緊急事態宣言や都市封鎖。
新型コロナウィルス感染症の影響により、世界各地で市民生活が激変しています。
パリやミラノの映像を見ると、夢を見ているのかなという気持ちになります。
自宅待機を余儀なくされている人は全世界で約17億人、数日前の報道です。

ここにきて関東一円でも、週末の外出自粛が要請されるなど、少し様子が変わってきました。

そんななか、社会全体のイライラが募って、他人に厳しくなっているような気がして、ちょっと怖いです。
公園で遊ぶ子どもたちへの苦情などは、過剰反応のように思えます。

緊急事態宣言は発令されるのか否か、その場合、過度な私権制限のリスクがないのかどうか、
こんなときこそ冷静さを失わずに見極めていきたいものです。

事務局 荻原

 

双葉町のばら園を知っていますか

あれから9年の月日が経ちました。
そして2020年3月14日に常磐線が全線開通し,双葉駅も再開しました。
それに伴って,帰還困難区域が一部解除されましたが,これが復興の足がかりとなるのか,個人的には甚だ疑問に感じています。
震災前の双葉町の名所は,原発と「ばら園」でした。
高度成長時代に園芸の素人だった岡田勝秀さんがつくった「ばら園」は,年間5万人もの人々が訪れるほどの観光地になっていました。
それが一瞬にして原発事故により放射能を浴び,廃園と化してしまったのです。
岡田さんは東京電力と裁判中とのことですが,訴訟において,心血を注いで育てたバラ,風景式庭園を構成する桜やヒマラヤスギは立木と認定されたのだそうです。
人間が手塩にかけ心血を注いで育てた植物は,私たち人間と同じ「生きもの」です。ただ生きているのではありません。愛情に応え,自然の風景とも協調し,ひとつの世界をつくってきました。
ただの立木としか認識できない国と東電。
東京オリンピックの今年,どうしても原発事故があった福島の復興を演出したいのでしょう。人が住めない双葉町
この夏に,美しい海岸線を見ながら原ノ町駅まで行った,同じ常磐線に乗って,変貌した海岸の風景を見るつもりです。
事務局 長沢

情報に結果として踊らされる

コロナウイルスの問題で、インターネット上では虚実入り交じった情報があふれ、憶測が憶測を呼んでいます。

そして、結果、我が家から、トイレットペーパーの備えがなくなりました。
ここ数日、探していますがどこにも売っていません。

トイレットペーパーが不足するという嘘がばらまかれ、それに踊らされた人々が買いだめをした結果、実際には豊富に在庫があるにもかかわらず供給が間に合っていない状況のようです。

僕は、買いだめをしたいわけではありません。すぐに必要となるであろうトイレットペーパーを求めているだけです。
ただ、結果として、端から見ると買いだめをしようとする人々と同じように、トイレットペーパーを求め、踊っている状態です。

なんというか、本当に、無責任な人の声が大きくなりすぎていないでしょうか。
表現の自由はとても大切な権利です。
ただ、昨今の状況からは、表現を受け取る側で、相応の対策が必要です。
なので、何が言いたいかというと、とりあえず、トイレットペーパーを買わせて下さい。
(弁護士竹内和正)

格差という壁

いま話題の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」を見ました。さすがに外国の賞を総なめにしただけあって非常に面白い映画でした。

半地下にひっそりと住んでいる極貧の家族がふとしたきっかけで豪邸に住む富裕層の一家に寄生(貧困一家とはつゆ知らず)しながらしたたかに生きていく様をコメディータッチで描いているのですが、途中、豪邸に隠された秘密が暴かれてからはいささかオカルト的なストーリー展開も加わり、クライマックスで破局的な結末を迎えます。

韓国は1997年のアジア通貨危機によって国家破産寸前までいきましたが、思い切った経済改革の断行により短期間で経済が回復しました。しかし改革の反動もあって日本と同じく格差が拡がっており、この映画は韓国の格差社会の現実をコメディーというオブラートに包みながら告発しているのだなという印象を受けました。その意味では大ヒットした是枝監督の映画「万引き家族」にも相通じるものがありますね。

ちなみにこの映画の原題は「寄生虫」です。

事務局 A・K