憲法Caffè

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「戦争とは」、そして「戦争に抵抗するには」

「戦争とは」、そして「戦争に抵抗するには」

ナチス・ドイツがユダヤ人大虐殺を行ったことに対し、
ハンナ・アーレントは「世界最大の悪は、ごく平凡な人間が行う悪です。
そんな人には動機もなく、信念も邪心も悪魔的な意図もない。
人間であることを拒絶した者なのです。」
ハンナ・アーレントは「悪の凡庸さ」と名付けました。

デイブ・デリンジャーは「From Yale to Jail」の中で、
ベトナム戦争で捕虜訊問係であったピーター・マーチンセンの証言を引用しています。

「われわれ訊問係の全員が、実際の拷問に加わっていたのです。
みなさん、おわかりでしょうが、誰であれすべて拷問に加わるのですから、
-彼らは、ごくふつうの人間にすぎないのだと思います
-とすれば、それなりの状況が与えられれば、
人間には自分と同じ仲間の人間に対して危害を加えるという能力が、
本来的に備わっているのだということになるのです。
そして、それなりの状況というものを、ベトナム戦争は与え続けているのです。
みなさんが、同じ仲間の人間を殴りつけるという、こうした訊問をやることなど、
考えただけでも恐ろしいことですが、
はじめのうちは、望むような結果を得るために、殴りつけるのです。
しかし、次には、みなさんは、怒りから彼を殴るようになります。
そして、次には、喜びから彼を殴るようになります。」

何度も投獄されながらも、市民的非暴力抵抗の活動を続けてきた
デイブ・デリンジャーは、なぜ、続けられるのか問われ続け、
その理由をこう述べています。
「人を痛めつけることに「喜び」を見出すような病いに、
「ごくふつうの人間」が冒されているのを見たくないからなのだ。
この国(アメリカ)の社会の中にある、ある種の制度、すなわち、
監獄、死刑、戦争という機構のなかから、そこで行われている殴打や
拷問、殺害に、ときに人びとは指示や喝采を送り、あるいは加わりさえする。
そのとき、私は、そこに病いがあるのを目にする。
しかしまた、人びとは、個人的成功の追求、勝者と敗者、
覇者と犠牲者とを生み出す競争のなかでも、同じ仲間の人間を打ちひしいで、
喜びを見出している。
・・・・・私たち自身のなかと、この社会のなかにある、あの病いを癒すために、
額に汗して力を尽くし、しかもその目指すものを共に心に抱きながら、
イデオロギーや行動での不毛な画一を求めることなき人びとの「最愛の共同の場」で働くこと、
そのこと以上に心を満たしてくれるものはあり得ない、ということだ。」

欧米、アジア、ロシアが軍拡競争を始めています。
私たちは、ハンナ・アーレントの言う「悪の凡庸さ」、
デイブ・デリンジャーの言う「病い」に冒されないようにするために、
事実を見極め、何が起きようとしているのか、考え続けなければならないのだと思います。

(弁護士 伊須慎一郎)

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