「秘密保全法」は誰のため?

10月19日,秘密保全法について所内で学習会が開かれました。

 昨年9月,沖縄尖閣諸島沖における中国漁船衝突事件のビデオ映像がインターネット上に流出した事件について,未だ記憶に新しい方々は多いと思いますが,秘密保全法はその事件を一つの契機として政府が検討を進めてきたといわれています。
 かつて自民党政権時代には,国家機密法という法律の制定が検討され,最終的には知る権利を侵害するとして数多くの識者や市民団体,民主党議員の反対により廃案になったという経緯がありますが,秘密保全法はその焼き増しだといわれています。
 政府は秘密保全法制定の目的として,国益や国民の安全を守るためだと謳っていますが,実際は国民の知る権利や言論と報道の自由をはじめとする基本的人権の侵害の危険が極めて大きいという点で,秘密保全法はかつての国家機密法と同種の危険性をはらんでいます。
 それどころか,保護する秘密の範囲は国家機密法のそれよりも広範囲に及び,また,秘密を取り扱う者やその配偶者等関係者について,職歴,活動歴,信用状態,通院歴等の調査をおこなう適正評価制度の導入も検討されており,国家機密法よりも一層重大な問題を有しているといえます。
 今回,かつてその国家機密法に反対していた民主党が,以前の自民党と同様,国家権力の拡大を目的とした(ように思えてならない)秘密保全法を持ち出してきたわけですが,国家権力を手にしたことでこうも簡単に意見が変わってしまうものなのかと,この国の行く末が案じられてなりません。
 果たして,私たちはこのまま秘密保全法制定へと向かう動きを漫然と眺めているだけで良いのでしょうか。私たち1人1人の声は小さなものですが,小さな努力が大きな力になると信じ,国民の権利を守るために秘密保全法制定に疑問の声をあげ続けることが必要ではないでしょうか。

猿田

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