裁判の公開原則(リレーメッセージ)

1948年から1972年まで95件のハンセン病患者の裁判が裁判所外の隔離施設などに設置された「特別法廷」で開かれていました。先日、最高裁判所は、遅くとも1960年までには、ハンセン病が隔離政策を用いなければならないほどの特別の疾患ではなくなっていたことを理由に、1960年以降の裁判について、合理性を欠く差別的な取扱いだった疑いが強く、裁判所法に違反していたと判断して、患者に謝罪しました。
しかし、「特別法廷」が隔離先の療養所に設置されており一般の人が近づきがたい場所であったにもかかわらず、開廷場所の正門に法廷を開く旨の告示があったことなどを理由に、裁判の公開原則には違反しないとしました。
憲法82条1項は、裁判の公正を確保するために裁判の公開原則を定めています。一般の人が自由に傍聴できるからこそ裁判の公正が確保されるのです。当時、療養所に設置された「特別法廷」での裁判が、一般市民の裁判と同程度に実質的に公開されていたとは言えないのではないでしょうか。

さて、さいたま地方裁判所で行われている生活保護基準の引下げが違憲であるとして引下げの取消しなどを求める裁判では、聴覚障害者の方が傍聴にいらっしゃいます。聴覚障害者の傍聴には手話通訳者が必須であるので、裁判所も弁護団からの要求に応えて手話通訳者2名が傍聴券なしで入廷することを認めていますが、手話通訳者の配置や費用の負担は今のところしてくれていません。4月1日から障害者差別解消法が施行されたこともあるので、聴覚障害者にとっての裁判の公開を実質的に確保すべく、手話通訳が裁判所の費用負担で実施されるよう、最高裁判所に対しても引き続き要求していきます。s_0_vc7_h4-text-list-01_vc7_h4-text-list-text-06_0_vc7_img-01

(弁護士 古城英俊)

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