「朝鮮学校・授業料無償化訴訟」

今年9月13日、東京地裁は、
朝鮮学校を高校無償化の対象に指定しなかったのは違法として、
東京朝鮮中高級学校の元生徒が国を相手に損害賠償を求めた訴訟で、
請求棄却の判決を下しました。

高校授業料の無償化制度は、
国が高校に就学支援金を給付し、これを生徒の授業料に充てるというもので、
外国人学校でも、文科省が対象として指定すれば給付されます。

ところが、2010年4月の制度導入後、
朝鮮学校については文科省の審査がなかなか進まず、
2013年2月、結局、全国計10校の朝鮮学校について
不指定とする処分が出されたのです。

類似の訴訟が、
広島地裁(今年7月19日判決)でも棄却されたものの、
大阪地裁(今年7月28日判決)では、
政治的理由で朝鮮学校を就学支援金給付不指定としたことは
国の裁量を逸脱したという理由で請求が認容され、
裁判所の判断が分かれているところです。

また、朝鮮学校については、国だけでなく、
複数の自治体が補助金を不支給としていることも、問題になっています。

生徒の教育の機会の均等の確保という高校無償化の趣旨は、
外交や政治的な理由で曲げられるべきものではありません。
在日コリアンが日本に定住してきた歴史的経緯もふまえ、
多様性を認める、豊かな社会であってほしいと願います。

(弁護士 佐渡島啓)

 

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