小さいおうち

中島京子氏の「小さいおうち」を読みました。
山田洋次監督により、映画化もされていますね。

昭和モダンという和洋折衷文化が花開いた時代、普通の人々の生活に、戦争がいかにして忍び込んでいくのかを、ある家族の物語を通してリアルに描いています。戦前とか戦中というと、「今の私たちとは全く違ったメンタリティーの人々が生きた時代」と考えがちですが、そうではなかったのですね。

幻に終わった昭和15年の東京五輪、まさに6年後の東京オリンピックと重なります。当時は、軍需景気があって経済が上向きで、三越では勝戦バーゲンなんかをやっていて、戦争をしている一方で、ほのぼのとした日常がありました。景気がよくなると批判力がなくなって現状を肯定してしまう、その傾向は今も変わらないと思います。

今のこの生活と戦争が共存できること、例えば、どういうわけか海外のニュースリソースにアクセスできなくなったり、外国人のお友達がひとりふ小さいおうちたりと帰国してしまったり、同僚が戦争にいくために長期の休暇に入ったり、たぶんこんなふうに少しずつ、現代の生活の中にも戦争が入り込んできます。少しずつなので、徐々に慣れてきて、最終的には、それが当たり前になっていきます。

今、一人でも多くの方に、この静かな恐怖を感じてほしいです。そして、戦争を止める方向で、大きな動きをつくりたい。そういう冷静な大人の存在が、未来を生きる子どもたちの希望につながると信じたい、そんなふうに感じているのです。
(事務局 荻原)

この記事を書いた人

目次