5 突然の終戦
1945年8月9日、突如としてソ連が満州に侵攻します。当時は厳しい情報統制が敷かれていたため、もちろん開拓団は、日本が戦争に負けそうになっていることなど知りません。実際は厳しい戦況であったため、開拓団の成人男性は根こそぎ軍に動員されており、開拓団には女性や子どもたち、老人しか残されていませんでした。突然の事態に、開拓団は逃避行を始めます。
6 決死の逃避行
銃弾が飛び交い爆弾が落ちる中、開拓団はただ必死に逃げました。大雨で増水した川を死に物狂いで泳いで渡るときに、自分の子どもが渡り切れずに流されていくのをただ見るしかない母親もいました。みな自分が生き延びるのに精一杯で、弱った人や歩けなくなった人は、やむなく見捨てられて死んでいきました。
逃避行のさなか、満州の現地住民らから略奪や襲撃にも遭ったそうです。彼らは、日本人に土地や住まいを奪われており、積年の恨みを晴らそうと、逃避行をする一般の日本人を攻撃したのでした。
開拓団は、関東軍の駐留地に向けて逃げていきます。友軍のいるところに行けば何とか助かる、そういう思いで必死に逃げたそうです。ところが、いざ駐留地に到着しても軍など誰もいない、もぬけの殻でした。いち早くソ連侵攻の情報を得ていた関東軍は、開拓団を見捨てて既に別の場所へ避難をしていたのでした。
つづく・・・
(弁護士 深谷直史)